ちょっと珍しい7本継ぎの沼津竿。
こんばんは。
”シャチョブロ”です。
今日は久々の釣りネタ。
ちょっと前になるのですがこのホームページを見てくださったYさんという方からお電話を頂きました。
インターネットで沼津竿を検索していたら”シャチョブロ”に行きつき・・・。
「沼津竿を持っているのですが、どのような竿で誰の作か、価値的にはどんなものなのでしょうか?」というお問い合わせでした。
もう既に作者が居ない”沼津竿”。
竹製の中通し竿なので一本一本の調子がそれぞれで、その昔に黒鯛釣りに大活躍したであろう沼津竿のことになると興味しんしんです。
これがYさん所有のちょっと珍しい7本継ぎの沼津竿です。
沼津竿は基本的には10本継ぎなのですが、製作途中で竹素材の調子や使い勝手、作り勝手などの関係で8本継ぎの竿は現存していますが、7本継ぎの沼津竿はちょっと珍しい竿です。
もう何年も使用しておらず素材の竹自体は油っ気も抜けてカラッカラに枯れてしまっています。
ちょっと可愛そうだったので椿油をたっぷり塗り込み、継ぎ口の内部には鬢付け油もたっぷりと塗っておきました。
Yさん勝手なことしてすみません。
手元の竹は(リールが付く一番手前の竿部分)は布袋竹です。
本当の沼津竿の手元の素材は矢竹ですが、実際のところある程度の太さの矢竹はなかなか手に入らなかったために黒竹が多く使われています。
かなり使いこまれた感がある沼津竿で、繋いでみるとかなりの柳調子(柳の枝が自然に曲がるように全体的に柔らかく曲がる竿の調子)。
沼津竿の本来の調子は8対2くらいの先調子(竿全体から見て竿先2割くらいが曲がる竿の調子)ですがこの竿はきっと魚を掛けたら満月に曲がって実に釣趣としては愉しい竿でしょう。
セットで付いていたリールは植野精工製(後のオリンピック)太鼓型リール。
沼津竿に付けるにはいかつ過ぎるリールですがこれもかなり古いもの・・・。
たぶん昭和36年から40年頃に活躍したリールだと思います。
太鼓型リールって仕掛けを投げる時はこのようにグリッと反転させて投げる事で道糸が出ていくようになっています。
私は使ったことが無いので両方にリールを巻くハンドルのつまみが必要なのかな?とか思ってしまいます。
リールを付けるための金具のリールシートはかなり古いものでオリンピック製ですが恐らくこれは竿製作時に付けたものでは無く、後にストック品に取り替えたものだと推測されます。
でも、ぐっとレトロ感が醸し出されています。
元竿のには製作者の焼き印がちょこんと入れてあります。
『竿晴』。
この焼き印は正直初めて見ましたし、『竿晴』という沼津竿製作者を私は知りません。
私が所属する沼津潮(うしお)倶楽部の先輩会員に見せてもみんな揃って「う〜〜ん・・・。初めて見たわ。わかんにゃ〜。」と首をかしげるばかりでどうもなりません。
「困ったな〜」
ネットで調べても何にも判りません。
でも焼き印まで作ってるってことはそれなりに本数を作っていた人ではないのかな?と思うのです。
あっ、そうだあの人なら判るかな?
あの人とは何を隠そう沼津潮倶楽部名誉顧問の藤川一範氏です。
伊豆半島の闘将と呼ばれ、石鯛釣りでは全国区の御仁。
石鯛釣りを本格的に始める45年位前以前は黒鯛釣りに没頭し、年間釣行日数360日を誇った釣り名人であります。
1年が365日ですから、360日釣りに行ってたってことは・・・?
元旦と台風の日以外はどこかで竿を出していたことになります。
ホンマでっか?!
これ、ホントの話です。
私が釣り雑誌をむさぼり読んでチョロチョロと沼津辺りで釣りをしていた20代の頃、超憧れの釣り人であり、この人が率いる沼津潮倶楽部という釣りクラブは猛者揃いで有名でした。
私がそのクラブに入って磯釣りをするなんてことは敷居が高すぎてその当時は絶対に不可能としか思えませんでしたがひょんなことで入会させてもらってもうすぐ19年が経とうとしています。
話がそれましたがうちの名誉顧問なら判るかな?と思い、「会長〜(現会長ではありませんがやっぱりこの呼び方がしっくりくるので今でもこう呼んでいます)この竿の『竿晴』って誰だか判る〜?実は赫赫云々でさ〜。」
「ん?あ、裾野の晴(はる)さんのだわ。昔、良く志下の桟橋で一緒に釣りしたわな」
ありゃま、意外と簡単だったのね。
『竿晴』さんという方は趣味で沼津竿を作って黒鯛釣りを楽しんでいたそうです。
もちろん既に他界なさっています。
沼津竿は『竿茂』の銘が入っているもので状態が良ければ中古品でも20万円から25万円程の値段で取引されるそうですがそれはマニア同士での話であり、実際沼津竿がどうしても欲しいという人でなければ値段のつけようが無いのは事実です。
Yさんは現在、エギングに凝られているようなので沼津竿は使う機会が全く無く、手放してもよいという事でしたが今はだれも作る人が居ない沼津竿であり、これからも入手は困難であるのでコレクションで持っていてはいかがでしょうかと思うのですがどんなもんでしょう。
さ、とりあえず『磯・投げ情報』6月号(4月25日発売)の原稿も書き終わって、なんとか締め切りに間に合いました。
明日は午後から晴れそうです。
花粉も飛びそうです。
仕事もおかげさまで忙しいです。
この1週間がんばりましょう。
では、また。